♨️風呂太郎のおもちゃ箱🤖

玉金レボリューション✨

【過去の記憶】いちごミルク

某コンビニでの話。

私はそのコンビニでアルバイトをしていた。

 

 

コンビニには、いろいろなタイプの人が来る。

サラリーマン、OL、学生、主婦、労働者風の人。

 

 

 

なかでもいちばんヤバかったのが、

いわゆる ″その筋系の人″。(ヤ○ザ)

 

 

 

それ系の人は、何人か来ていた。

基本的には、普通の対応をしていれば

なんてことはない。

 

 

しかしながら、威圧感が一般人のものとは

比較にならない。

 

 

その中でもバリバリ(恐らく組長クラス)の男がいた。

 

 

頭はツルツルのスキンヘッド。でっぷりしているが、

背は小さく(160cmくらい)、いつもデカいネックレスをしていた。

 

 

そのオッさんがくると、店全体の空気が一変した。店員も含め、急にピリつくのである。

 

 

 

ヤーさんのお目当ては「いちごミルク」。

店で調理販売していたアイスクリームだ。

 

 

それのみを買いに、定期的にやって来る。

 

 

 

 

まず店の前に、黒塗りベンツを停車する。

 

 

ゆっくりとドアを開け、巨体を揺らしながら

店内に入ってくる。

 

 

他の商品には興味を示さず、いきなりレジに向かって来る。

 

 

 

そして「いちごミルク一つ。」

そう言って、ひとさし指を1と立てる。

 

 

 

表情はヤ○ザそのもので、目線は私をとらえて

離さない。

 

 

 

 

 

 

私がいちごミルクを作っている間は、

レジ前に仁王立ち。

 

 

店内のすべてが、そのヤ○ザを中心に成り立っている。

 

 

いちごミルクが待ちきれないのか、いつも足踏みしていた。

 

 

 

 

 

男は200円を払い、いちごミルクを受け取る。

 

 

そしてニコリともせず、

黒塗りベンツに乗り込んでいく。

 

 

 

 

 

 

あるとき、いつものようにいちごミルクを

買いにやって来た。

 

 

黒塗りベンツを路上駐車し、とてつもない

オーラを醸しやってくるヤ○ザ。

 

 

レジに来ると、「いちごミルク、1つ。」

と言って指で1を作ってきた。

 

 

「少々お待ち下さい。」

 

 

私はそう言って、ソフトクリーム機へ向かった。

 

 

そして誠心誠意、真心をこめていちごミルクを

作った。

 

 

おっさんに渡すと、なぜか表情が曇った。

おそるおそる様子を伺っていると、

突然おやじは言った。

 

 

 

 

「足りない。」

 

 

 

 

一瞬、何を言っているか分からなかった。

 

 

 

 

威圧感に圧倒され、私はビビっていた。

 

しかし、いちごミルクを見て気がついた。

確かに1巻き足らない。

(アイスクリームの形状はご存知でしょうか?

グルグル巻きのあれが足らなかった。)

 

 

 

マニュアルでは4巻きで作成であった。

 

 

うずまきが足らないと言うことは、覚悟が足らなかったということだ。

 

 

 

「すみません、すぐに作り直します。」

 

 

 

私は急いで新しいものを作り、おやじへ渡した。

「お待たせして、すみませんでした。」

 

 

 

おやじは何も言わず、本物の顔でいちごミルクを

受け取った。

 

 

 

そしてそのまま、黒塗りベンツへと向かっていった。

 

 

 

 

 

私はそれとなく、ベンツの中の様子を伺った。

 

 

 

 

 

 

本物はベンツの中で、いちごミルクにがっついている。

 

 

すると、いちごミルクに向かっていた男の目線が

ゆっくりと私のほうへ流れてきた。

 

 

 

 

私と男の目線は、完全にバッティングした。

 

 

頭の中で、男の声が聞こえる。

 

 

 

 

「ヤ○ザがいちごミルク食っちゃ

 いけねーのかよ?」

 

 

 

本物はそのまま、ベンツを発進させ

去っていった。