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玉金レボリューション✨

【はてなブログ】引越しのバイト

お題「これまで生きてきて「死ぬかと思った」瞬間はありますか?身体的なものでも精神的なものでも」

 

 

 

学生のとき、登録制の派遣バイトをやっていた。

仕事があると連絡をくれ、直接現場へ向かうスタイルだ。

 

 

 

いろいろな仕事があった。

食品工場でキムチをコンベアーへ流したり、

瓶にシールを貼ったり、ふく梱包したり。

 

 

 

 

 

現場では、いろいろな派遣社員の人と話しをした。

その中でよく耳にすることがあった。

 

 

「引越しはヤバイから、紹介されたら断れ」

「引越しはマジ死ぬ」

「洗濯機を一人で運ぶ、バケモンがいる」

 

 

 

 

私は半分ネタだと思っていた。

噂というものは、だいたいおヒレがつき

話しが大きくなっているものだ。

 

 

肉体作業なので疲れるんだろうけど、そこまでじゃないだろう。

 

 

私は体力に自身があったこともあり、そんな風に思っていた。

 

 

 

 

 

 

ある時、派遣先から電話があった。

 

「明日行けますか?」

「大丈夫ですよ。どんなお仕事ですか?」

「引越し作業です。」

 

 

 

一瞬、噂が頭をよぎった。

しかしすぐに承諾した。

 

 

 

 

 

 

 

バイト当日。

7月の真夏であった。

 

 

現場では、三人の男が待っていた。

たぶん雇い主の会社の正社員だ。

 

 

 

二十代であろうか。

 

 

 

当時の私からすると、年上のお兄さんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その中の一人に目が止まった。

 

 

 

 

 

 

大柄でキムタク風のロングヘア。

それにぶっとい腕。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たぶんこいつだ。

バケモンは実在した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

引越しが始まると、1時間ほどで泣きそうになった。

 

エレベーターがないマンションを、家具を抱えながら何度も往復するのだ。

 

 

しかし三人の男達は、平然と運び続ける。

あたりまえのように、休みなく動き続ける男達。

 

 

とくに実在したバケモンはヤバかった。

他の二人よりも、デカイ家具を運んでいる。

 

 

 

 

 

一人の男が話しかけてきた。

「彼は、洗濯機一人で運んじゃう男だからね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伝説は本当だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かんかん照りの中、私は気合いで頑張った。

涙が出そうになった。

 

 

 

 

 

 

マジで死ぬかと思った。

 

 

 

 

 

 

 

そして途中で力尽きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後半は三人の男達に任せてしまった。

 

 

体力の限界だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、引越し作業は終わった。

 

「どうだった?キツかったでしょ。」

「かなりキツかったです。」

 

「オレらは、半分趣味みたいな感じだからね。

 あいつは日体大だしね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バケモンは日体大だった。